kimi 012



「復刻版 ひとり、ではなくキミが…01」

 モンバルキャンソン 中目 F6号

蝶が岳の山頂にあと少しというお花畑に、老人が1人うずくまっていた。

声をかけると、「胸のポケットからカプセルを出して、飲ませてくれ…」と死にそうな声でうめいた。

飲ませてしばらくすると、上半身を起こし

「名古屋から1人できたんだけど、…どーしても登るんだったらって、医者がクスリを持たせてくれて…」と言う。

小屋まで担いで行くか、従業員を呼んできましょうか?

と聞くと、「もう大丈夫だから、先に行ってくれ…」とニガ笑いで答えた。

私たちが小屋に着いてから、40分も過ぎたころ、その老人がようやくたどり着いた。で、すぐに売店に行き

ウイスキーの小瓶を買ってくると、コップを2つ出し、なみなみとついで

「ありがとう助かった、命の恩人と乾杯だ!」と差し出した。

こんどは、私が、ニガ笑いを浮かべてしまった…




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